【沢登り】安達太良山 石筵川(1級上)1泊2日の単独遡行から和尚山経由で下山

目次

石筵川から安達太良山に登り和尚山経由で下山

こんにちは、がくんちガクです。

6月の終盤、家族と登山のはずが妻子のスケジュールが合わず、久しぶりに単独で沢に登ってきました。安達太良山の稜線に突き上げる石筵川の本流筋を一晩野営しながら詰めて、和尚山を経由して下山するルートです。そんなわけで、動画と共に文章も残しておくことにしました。

動画については、本来は一人娘や友人達との思い出Vlogがチャンネルコンセプトのため、あまり単独行動の動画は作りたくなかったのですが、せっかくのネタでもあるので公開することにしました。

動画には一部始終を詳細に残しているので、初めて石筵川の遡行を考える方には、完全ガイドとして活用いただけます⇩⇩⇩

概要

【基本情報】

場所福島県 安達太良山 石筵川(1級上)
ルート:駐車場~石筵川入渓点~安達太良山~和尚山~石筵川入渓点~駐車場
日程: 2023年6月24日~25日
メンバー: 単独
天候: 曇り(一時にわか雨 0.5ミリ程度が20分程)

所感: 核心の滝はコンディション次第では勢い任せにフリーで突破できるような気はするが、安全第一にこだわった。今回は雨上がりだったため各所で若干緊張したが、平水時であれば核心以外は気持ちの良い直登ができそう。ちなみに、釣りはしなかったが魚影はちらほらある。和尚山経由の登山道が荒れていて、かなり体力と水分を削られてしまったため、水が枯れる前に十分に確保したほうがよい。

【行動記録】

【1日目】
8:45 銚子ヶ滝第3駐車場(母成グリーンライン沿い)からアプローチ開始
9:40 石筵川渡渉点(入渓点)で準備をして遡行開始
11:15 核心の滝に到着(2段10m)
15:30 標高1,345m付近で野営準備を開始

【2日目】
6:30 起床
8:20 2日目の行動開始
10:00 標高1,510m付近の二俣から本流筋へと進む
10:50 登山道(安達太良山頂に向かう「牛ノ背」)に到着
11:20 安達太良山の山頂エリアに到着し休憩
13:30 和尚山の山頂と下山道の分岐に到着し休憩
15:40 石筵川渡渉点に到着(ここから第3駐車場まで30分強)

今回参考にした素行図が掲載された書籍
(沢登り 入門&ガイド – 著者:手嶋亨,童人トマの風(山と渓谷社))
沢登り (入門&ガイド)

入渓前夜

子育てなど諸々の理由で5年間遠ざかっていた山の世界だったが、最近は娘と軽登山はするようになったため、昔やっていたことの少しくらいはやってみようという気になった。そんなわけで「岩・雪・沢」をやっていた5年以上前に予備で買っておいた新品の沢足袋を引っ張り出す。古くなった使用済みの足袋もあったが、古いフェルトは固くなって滑りやすくなるため処分して新品(旧新品?)と交代。とはいえ長期保管だったため、ウレタンフォームの靴底のようにバカっと外れたりしないか心配ではあったが、それは大丈夫そうだった。

それと単独で沢に入ると決まって怖い思いをすることが毎回1回くらいはあり、そうした記憶だけが鮮明に残っていたため、いくらガイドブックが1級上というグレーディングをしていても、ハーケン一枚くらいはお守り代わりに持っていこうと思い装備に含めた。もちろん脱出用ロープは当然の危機管理として持ってく。この時は、ハーケンもロープも使用するとは夢にも思わなかった。

娘に見送られて夜のうちに出発し、現地で適当な場所を見つけて車中泊。

アプローチ~入渓点

母成グリーンライン沿いにある銚子ヶ滝の第3駐車場に車を停めて準備を始める。昔から沢に入る時は、土木作業の作業着を着ることがほとんどなのだが、このユニフォームに身を包むのも実に5年ぶりで。この姿で沢を抜けて下山道を歩いていると、たまに会う山仕事関係者らしい人に「お疲れ様です!」と挨拶をされることが何度あった。

そもそも沢屋というのは汚れた外見で作業員のような印象を与えることがあることは自覚している。

準備を終えてアプローチを開始すると、すぐに熊出没注意の看板を目にした。この辺りは目撃情報が多いというのは把握していた。沢の周辺(特に下山路)に人が少ないのも見込んでいたため、用意周到に熊鈴とラジオを用意していた。もちろん大きな音が出せる笛も沢の基本装備としてコンパスとナイフと一緒に首にぶら下げている。

ラジオを聴きながら歩いていたら、偶然にも民間の遭難救助を行う団体の方の話を聞くというラジオ番組で、遭難者を遺体で発見した際の家族対応とか気遣いの話をされていた。「微妙に聞きたいような聞きたくないような複雑な内容だな」と思いながらも、興味深々と聞きながら歩いた。

銚子ヶ滝の方面に歩いているわけだが、この滝には土地の名主の娘が滝つぼに住む龍神への雨ごいの願いのために身投げしたという悲しい伝説が残っている。遭難とか身投げとか、これから沢に入るというのに頭の中は効きたくないキーワードだらけになってしまった。

和尚山への登山道上にある石筵川の渡渉点が、この沢への入渓点となっている。沢につくと前日の雨で若干水の勢いが強いかなという印象を受けた。増水だとまでは言わないが、平水ではない。

入渓点

入渓~核心の滝(2段10m)の下段部

準備を済ませて入渓すると、しばらくの間はゴーロ帯を進むことになる。入渓から1時間ほどで核心の滝に到着するのだが、途中、 3m、4m、2mなどと小滝も現れるため、まったくつまらないということもない。5年のブランクの私には沢というものを思い出すのに良い準備運動となった。

1時間ほどゴーロ帯を進む

そうこうするうちに核心の2段10m滝が目の前に現れる。下段の滝は右の壁を登るのが正解なのだが、岩の最上部がハングしているのが若干気にかかった。

事前のリサーチでは、荷物を背負ったままフリーで抜けたり、空身で上がって荷上げしたりと、色々な情報を見かけたのだが、1泊分の基本装備に加え、数々の煩悩(嗜好品)を詰めたザックでは空身しかないと思い、最初から荷上げのロープを結んだ。

核心の滝

雨のせいか、岩もかなり濡れていたので、綿100%のグローブをして登ってみる。苔むしていたわけではないので、素手のほうが良かったかもしれないが、結果は対して変わらないとも思う。

途中のテラスまで上がり様子を見た後、意を決してアタック開始。しかし思うようにいかない。何をすればいいのかイメージはつくのだが、濡れた岩のせいで手も足もすっぽ抜けるのではないかという強迫観念に支配されてしまい、何もできない。

しかたがないので、思い切りをよくするために残置ハーケンにメインロープでプロテクションを取ることにしたのだが、ハーケンの状態がよろしくない。明らかに浅くしか効いていなそうな錆びたクロモリハーケンが負のイメージを増大させる。

しかし静荷重ならいけるかなと思ったので、簡易アブミで突破しようと思い立った。でもやっぱり怖いので、自分のハーケンを残置前提で打つことにした。持ってたのは状況に対し最適なハーケンではなかったが、軟鉄製なのでクロモリよりは効く(ただし回収したくても簡単には抜けない)。

自分でハーケンを打つと、同じ溝に打ってあったクロモリハーケンはあっさり抜けた。つまり自分で打ったものがさらに効いたということでもある(さもなくば岩を破壊したということ)。スリングを自分のハーケンにかけ直して左足をねじ込み、ゆっくりと体重をかけて岩の奥に手をかけた。奥はガバになっていたので安心して攀じ登る。

核心のハング部分(頭上の360度カメラで撮影)

抜けたクロモリハーケンをまじまじと見たが、やはり先端2㎝ほどで効いていたようで、その部分も錆による浸食が進んでいた。こうやって見てしまうと、信用しなくて良かったと思えてくる。1本残置してしまったので、抜けたこちらのハーケンは責任を持って「燃やさないゴミ」の日に処分させていただくことにした。

核心の滝(2段10m)の上段部

2段10mの上段部は歩いて登れるという情報を得ていた。しかし、今日は増水気味なので、気を引き締めて登った。

途中で水流の中のステップを使う必要があったのだが、少しくらい水を被ってもいいかという軽い気持ちで左腕に水流を受けてみたところ、強い水圧で左半身が弾き飛ばされそうになった。右側はしっかりホールドしていたので、落ちるほどではなかったが、これで恐怖心が一気に膨らみ、慌ててもっと右側へルートを修正した。右過ぎるのを嫌った理由は、多くの場合、水流が無い部分というのはヌメリで滑りやすいことが多いためだが、この場所に限っては苔の状態がよく、滑るということはなかった。一安心である。

滝の上まで抜けて、ようやく一息ついた。下段のアタック開始から上段の上まで抜けるのに、荷上げも含めて30分もかかってしまった。これより先に難所は無いという認識だったが、単独行は小さな間違い一つで命にかかわるため(たとえば捻挫一つでも大変なことになるかもしれない)、気を抜かないようにと自分に言い聞かせた。それでも安堵したのは事実。

長いナメ~最初の幕営候補地

核心の滝の上からは、約300mの綺麗なナメが続く。1時間以上もゴーロ帯を歩いた後に急にナメが連続すると、その足首や足裏への優しい感触に感激する。

300mのナメが終わると7mや2段8mという大き目の滝が現れるが、特に難しいことはない。水流が強かったので、左岸から右岸に飛び移るのに若干緊張した程度である。

そうこうしているうちに、1泊で遡行されている方々の記録に出てくる標高1,210m付近の幕営地が現れた。そこには、大股の一歩で上がれる程度の高台に、きれいに整地されたようなフラットな場所が広がっていた。4m x 6m以上の広さがあったように記憶している。テント2棟は張れそうだった。

綺麗な幕営地

穿った見方をしたのかもしれないが、まるで管理キャンプサイトのような綺麗な様子が私の天邪鬼な性格を刺激し、もっと先にワイルドな場所はないかと考えてしまった。時間も早いので、もっと先へと歩を進めておきたいというのもある。1人用のツェルトが張れればいいので、どうにでもなるだろうという考えもあった。

そしてこの綺麗な幕営候補地を後にした。

次の幕営候補地を探して

最初の幕営候補地を後にすると、ほどなくして10mの滝が現れる。この滝は平水時なら右側の水流の中を直登するのが簡単そうだなと思ったのだが、今日は水流の中は無理なため、もっと右の茂みとの際を登った。ところがその右端のルートは、かなりヌメリが強く、部分的にコケに覆われて滑らない場所を探りながらの、階段状なのにスラブを登っているかのような慎重な動きが必要だった。

10m滝を抜けて少し行くと、左手から支流が流れ込んでいる。ここは明確に沢の太さが異なるため(たぶん1:2くらい)、右の本流へと進む。

そうしてしばらく進むのだが、幕営地らしい場所が見当たらない。1人でのツェルト泊なので、少しのスペースがあればどうにでもなるのだが、最初に見た幕営候補地があまりにも綺麗だったため、そうもそのイメージが抜けないらしい。

「こうなったらどこで妥協するかだな」と考え始めた時、標高1,345m付近で丁度ツェルトが張れそうなコンパクトで平らな場所を見つけた。水の流れも静かでいい。こうして幕営地が確定し、湿った薪で四苦八苦しながら焚き火を起こし、担ぎ上げた煩悩の塊を楽しんでから就寝した。

ぼっちで野営

2日目の行動開始~登山道

朝は5時台には起きてと考えていたのだが、ツェルトから出たのは結局6時半。寝坊したなと思いつつも、米を炊いたり焚き火を起こしたりとゆっくりしていたら、出発が8時20分になってしまった。

出発してすぐに、藪沢のような雰囲気になり、標高1,380m付近にある二俣に出合う。この二俣は、安達太良山に向けて右に向かう記録も見かけるのだが、藪漕ぎが大変らしい。ここは急がば回れで左の本流筋へと向かう。

1,380m付近の二俣 (1:1)

二俣からしばらく歩くと、目の前に地形図に表記されるほどの大きな岩崖が現れ、その真下を過ぎたあたりに本格的な藪沢への入り口がある。とは言っても、そこまで苦労する藪ではなく、ちょっと引っかかって面倒くさい程度であった。

ちょっと煩わしい程度の藪

藪沢を抜けると急激に視界が開けてきて、標高1,510m付近には再び二俣が現れる。ここは右の安達太良山方面からは水流があるのだが、左の本流は枯れ沢になっていた。もちろん左の本流を進む。

枯れ沢がまるで登山道のよう

まるで登山道のような歩きやすい枯れ沢をしばらく進んで行くと、またしても沢筋が二手に分かれていた。右は植物で覆われているため、ちらっと見ただけだと左の沢筋が本流に見えてしまう。しかしここは北へ向かうと方角を定めていたため、正しいのは右へ進むこと。それは地形図とコンパスで確認できている。

それにしてもこの本流筋は藪漕ぎがまったく無い。嬉しい誤算であった。

こんなに藪がないとは

この辺りから稜線を歩く登山者が確認できた。そして稜線の際まで上がると、登山道を歩く登山者にいぶかしげに見られながら(そして登山者の何名かに対して彼らの向かっている方角が間違っていたかのような錯覚と混乱を与えながら)、ようやく踏んだ登山道は、船明神山と鉄山と安達太良山の三叉路にあたる部分。ここから「牛の背」を通って安達太良山へと向かった。

途中で登ってきた沢筋が見えて感慨深いのだが、一般登山客が北側の福島市方向を眺めている中で、怪しい身なり(?)のオジサンが、うっそうとした南側を眺めている姿はは、道行く人に違和感を与えていたかもしれない。

登山客とは真逆を見て写真を撮る

山頂エリアで下山道探し

安達太良山の山頂エリアは、ロープウェイ利用の軽装ハイカーや、一般登山道からきた登山者、トレランの超軽装集団などで賑わっており、ヘルメットに足袋という姿も私は完全に浮いていた。

少し休憩して和尚山を目指そうとしたのだが、登山道が分からない。それっぽいところを下ったり登り返したりを何度か繰り返したが、どうなっているのか理解できない。バリエーションルートから登山道に出てきたから、何か感覚が麻痺でもしているのだろうかと自分を疑ったのだが、それにしても様子がおかしい。

改めて注意深く見て回ったところ、倒れた看板を発見。安達太良山と和尚山を真っすぐ結んだ線上に転がっているところを見ると、ここが登山道の入り口に違いないと思った。ところがこの道は過ぎに行き止まりとなりさらに混乱する。

これにはさすがに唖然とした(和尚山の看板とは限らないが)

再度、登り返しながら横移動を加えて探ったところで赤テープを発見。

その場所から下ってみたところ、別の赤テープを発見したので、ようやく自信が持てた。そういえば、山頂エリアでうろついている時に、赤テープらしいものを見かけた気がしたのだが、最近視力が落ちているせいか、目の錯覚だと思ってしまった。先に確認すればよかったと反省。

この赤テープを辿って下っていくと、崩壊した看板が「石筵」の方角であることを示していたので、やはり間違いではなかったとようやく確信に変わった。

テープからしてルートがマイナーなのが分かる

和尚山へ

それにしても道が悪い。ぬかるんだ泥と登山道に突き出した枝葉で、藪沢が続いているかのような錯覚を受ける。「よく転ばなかったな」と我ながら感心しながら30分ほどで辛い下りを終えると、しばらくは楽な水平移動なのだが、相変わらず道が狭くて歩きにくい。安達太良山と違って誰にもすれ違わないのが不気味だったが、逆に人にすれ違うほうが不気味かもしれないとなどと考えながら歩くうち、和尚山への急な登りが目に入って憂鬱な気分にさせられた。

和尚山への上りは急な泥道道も狭い。注意していれば落ちるということはないだろうが快適ではないし、高度感と露出感があって少し緊張する。

斜面が緩やかになったところ

急登が終わりほっと一息ついてからの水平移動がこれまた長い。登りが終わったらすぐ分岐点くらいのイメージをしていたので、期待値とのギャップが原因とも思うが、まるで永遠に続くかのような錯覚を覚えた。

安達太良山から2時間近くかかってようやく和尚山の分岐点に到着。草饅頭をほうばってしっかり休憩したのだが、残りの水が少なく喉につかえた粒あんが飲み込み切れずに気になる。それでも下り道用にせめて2口程度の水は温存しておいた。この時点で精神的にも体力的にもけっこうキツイ

分岐点の小さな広場

和尚山分岐点から下山

ここからの下りは相変わらず荒れた登山道で、転ばないようにバランスを取りながら1時間ほど下ると、歩きやすい平坦な場所に出た。ところがここは熊笹に覆われたうっそうとした森。いかにも熊がお似合いの景色が恐怖心を煽る。大きな音でラジオを鳴らして速足で進み、30分程度で無事に熊笹エリアを抜けると、今度はつづら折りの急な下りが始まった。この最後の下りはかなり荒れている。時折道を見失いながら赤テープを頼りに30分程下ると、ようやく前日の入渓点に到着した。

冷たい沢の水で火照った体を冷やして休憩を取ると、生命力が沸き上がってくるのを感じる。足早に駐車場へ向かう最後の歩きの途中、銚子ケ滝を見に来たであろうカップルに追い付いたのだが、暗い登山道に白いロングスカートをヒラヒラさせてサンダルで歩いている女性の後ろ姿が現れた時は、一瞬、幽霊かと思って二度見してしまった。

あの服装で登山道を歩くのはさぞ大変だろうなと思いながら、さっそうと追い抜いて帰路を急いだ。

ガク

★がくんち – Gaku’s Base★

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