【ユーコン川カヌー】Ep.3 修行編 ~ 野尻湖と犀川で初心者がカナディアンカヌーの武者修行

目次

ユーコン遠征に向けたカナディアンカヌーの練習

こんにちは、がくんちガクです。

特集・ユーコン川カヌー」は、山仲間でカヌー初心者の男女4人がカナダのホワイトホースへ渡り、テスリン川~ユーコン川の370kmをカナディアンカヌーで下る一連の行動を追いかけるもの。ユーコン遠征間近となった今、カヌー技術習得こそが重要な課題となっていた。そこで今回は、「ウクディパドリングスクール」による2日間のカヌー講習に参加した時の様子を記事にしたい。「カヌーはやったことないけどユーコン川は下りたい」という潜在的カヌーイストはそれなりに存在するようなので、同じくド素人の我々がどんな練習を経てユーコンに向かったかという目線で参考になれば幸いである。

ユーコン川下り遠征の4人(詳細プロフィールは過去記事へ👉こちら

ガク

やまとさん

みやちん

あっちゃん

今回の修行の様子は前編と後編の2本の動画に分けて収録 👇

1日目: 野尻湖でのカヌー基本操作の講習

2日目: 犀川(さいかわ)での川下り実践

「特集・ユーコン川カヌー」の過去記事はこちら 👇

【ユーコン川カヌー】Ep.1 計画編 ~ カナダ・ユーコン川遠征を決定
【ユーコン川カヌー】Ep.2 情報編 ~ 現地ガイドと話して考えたこと
【ユーコン川カヌー】Ep.2.5 補足編 ~ ホワイトホース乗継便のお得な予約方法(2024年4月現在の情報)

長野県の野尻湖に集合

時は4月の終盤。我らのユーコン遠征は5月末(4人のうち1人は5月中旬)のため準備は大詰めの段階。過去記事にもあるが、ユーコン現地ガイドの櫛田(くしだ)さんクロンダイク・カヌーイング・レンタルのオーナー)からは、「ユーコン川をなめるなよ」と言わんばかりに渡航前の武者修行を言い渡されていたため、その時に紹介を受けたウクディパドリングスクール代表の石川義治氏にお願いして、藁にもすがる思いでウクディ道場の門を叩いた。余談になるが、後に櫛田さんとは日本でお会いする機会があり、その時の会話でも石川さんのパドリング技術やツアー中の顧客対応に絶対の信頼を置かれている様子だった。もちろん我々も妄信するしかない。

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カヌー・カヤックはウクディ|体験、講習、ツアー、団体 カヌー(カヤック&カナディアンカヌー)専門の日本セーフティパドリング協会(JSPA)公認カヌースクール・ウクディの公式サイト。家族体験や初心者&初級者講習会から川下りツ...

石川さんから事前におすすめされていたのは、野尻湖の静水での基礎練習(1日目)と、犀川での実際の川下り(2日目)の2日間の稽古。もちろんカヌーの世界は奥が深いはずで、これで最低限の準備ということだろう (講習に関するリンク先👉野尻湖静水講習 /👉犀川川下り )。

東京組のみやちん、あっちゃん、がくの3人は前夜に新宿を出て野尻湖脇の道の駅で仮眠をとり、富山からのやまとさんは野尻湖にほど近い友人宅に泊まった。翌朝の9時30分には野尻湖のスクール拠点に集合となっており、友人に送ってもらったやまとさんと東京組が現地で合流。その友人というのが現在の太郎平小屋の小屋番(小屋番とは山小屋の支配人という意味)で、やまとさんが薬師沢小屋の小屋番ということで、二人の北アルプスの小屋番が野尻湖のカヌースクールに現れるという謎の状況を楽しみながら、後ほどの宴会の約束をしてから別れた。

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ユーコンに向けたカヌー技術習得の必要性を考察

カヌー修行の話の前に、技術習得の必要性について考察したい。ユーコンを訪れたことがある人からは「たいした練習はいらないよ」と聞くこともある。実際に我々の周りにも、ユーコン前に半日程度カヌー体験しただけで大丈夫だったとアドバイスをくれた人もいた。これを登山に例えると、「高尾山 (599m) しか登ったことななかったけど、富士山も大丈夫だったよ」と言っているのに似ている。たしかに好条件がそろえば何も危惧することなく済んでしまうのだろうが、思いのほか腹が減ったとか、高山病の症状が出たとか、捻挫したとかで、状況が一変するケースはいくらでも思いつく。低山だって登山者が救助されることがあるくらいだ。

静かな野尻湖の水面

カヌーの場合だと、うっかり「」(「ちん」と読み転覆を意味する)してしまった場合や、強風に見舞われた場合などに状況が一変する可能性が高いだろう。野生動物との遭遇もしかり。熊がカヌーを小突いて穴が開いたという誰かのブログを読んだこともある。何が言いたいかというと、他人の楽天的なアドバイスなど全くあてにならないということ。そして他人へのそうしたアドバイスも軽率には行わない方がよい。結局のところ、自分なりの軸や尺度を持つことが大切で、それが無いとリスク検知や判断ができない。ゆえに一定の危機感に基づく準備は必要で、何より海外まで長い川旅に向かうというのに、そんなところをケチってみても意味がない。天下一武道会を控えた悟空のように修行に没入(?)する自分を大いに楽しむべきだと思う。

ちなみに、ユーコン現地ガイドの櫛田さんのホームページから引用させていただくと、「時々、「カヌー初心者(初めて)ですがユーコン川を下れますか?」と言った質問を受けます …(中略)… 正直数回だけ練習をして、アラスカまでカヌーで下っていった方も何人もいらっしゃいます …(中略)… じゃぁ大丈夫なんだ。と思われるかもしれませんが、「大丈夫でしたね」と結果論で言うしかありません。実際には事故に遭い警察や日本大使館のお世話になった方もいらっしゃいます。死亡事故も発生しております …(中略)… そういったときは最後に頼りになるのは技術と経験そして装備です」ということらしい。日本で櫛田さんとお会いした時には知らぬが仏とも思える笑うに笑えない話をたくさん聞いた。

1日目:野尻湖

基本用語とチーム組成

話を修行に戻そう。カヌー講習の時間になり、まずは石川さんとご挨拶。最初の紹介で「トドと呼んでください」とのことだったので、ここからは「トドさん」とさせていただこう。というわけで、トド師範代から直々にカヌー講習の説明をいただき、川旅の基本的な質問(服装とか生活)についてこちらからも質問させてもらった。ユーコンは行かれたことが無いようだったが、グランドキャニオンなどの玄人好みしそうな川旅を豊富に経験されている様子。もちろんパドリング技術は仙人の領域だろう。服装については、足りないよりは持っていきすぎる方が良いというアドバイスが的を得ていた。川旅は冷えるので、濡れて不快な服装だと相当きついらしい。川での生活についても自然保護の観点からいろいろなアドバイスをいただいたが、ユーコンにはユーコンに適した(規制を遵守した)やり方があるようなので、ここでの紹介は割愛する。

さて、着替えて準備運動を終えたところでライフジャケットを身に着け、陸上で基本的なカヌー用語やパドルの使い方などを教わる。大まかには以下のようなことだった。

  • カヌーの船首を「バウ」、船尾を「スターン」と呼び、カヌーの前に乗る人を「バウマン」、後ろに乗る人を「スタンマン」と呼ぶ
  • パドルはシングルパドル(片漕ぎ)なので、持ちやすい側で持つ(その時に持つ側をオンサイトと呼び、逆をオフサイトと呼ぶ)
  • オンサイトが左右分かれるようにペアを組む(男女の場合、体格的に男性がスタンマンがいいというアドバイスだった)
  • バウマンがエンジン、スタンマンが舵取りという大まかな役割りがある
  • カヌー自体に前後は無い(機能的にどちらが前でも良い)が、シートの取り付け位置で前後が出来上がる
  • カヌーに乗り込む時と下りる時は腰を高くせず、しゃがむようにして足を移動先に置いてから体重を水平移動させる

以上の説明が終わり、あっちゃん(バウマン)&みやちん(スタンマン)ペアやまとさん(バウマン)&ガク(スタンマン)ペアの2チームが完成。いよいよ桟橋から出艇することに。

ちなみに、全員がカヌー初心者ではあるが、それぞれパドルスポーツの経験が少しづつあるメンバーもいて、具体的には、みやちんはアドベンチャーレースでカヌーとカヤックを少し漕いだことがあり、あっちゃんとガクにはシーカヤックとSUPの経験が少々。しかし、やまとさんはパドルスポーツ全般が初体験といった状況で、パドリングのコツをつかむのには苦労しているようだった。

パドリングの基礎

この日、野尻湖の静水で教わったのは、フォワード、リバース、プライ、スウィープ、ドロー5つの基本ストロークで、あとはこれを組み合わせてカヌーを操作するということだった。しかしこの5つのストロークは、どうやらトドさんが分かりやすくするために説明を5つに留めたのではないかと勘繰っており、たぶん知らず知らずのうちに別の名称のストロークも行っていたのだと思う。例えばプライやドローはラダーというテクニックによく似た操作のようだし、他では見かけるが登場しなかったJストロークという言葉も、おそらくはフォワードとプライの組み合わせのようなものだと想像する。つまり、頭の中をシンプルにするために「皆まで言うまい」という配慮をいただいたのがうかがえる。 (各ストロークの具体例については野尻湖の動画を参照👉こちら

穏やかな湖面にはカナディアンカヌーが似合う

さて、たどたどしいながらもなんとかカヌー操作が行えるようになったメンバー達。捕まえた水を大切に使うということも習った。「豆腐を食べる時の箸加減」ということらしいが、このアドバイスには感覚派(アーティスト)のやまとさんが好反応を示していた。次に陸上で、セルフレスキューと川下りにおけるフィールドの特徴や技術について説明を受けた。陸上でセルフレスキューを行った理由は、雪解け水で湖水が冷たすぎて、実際に沈をするなどの体験はやめておいたという理由である(実は翌日に犀川で沈したため、意図せず経験値を得ている)。

初日の講習を終え、翌朝の集合時間と場所を確認して解散。やまとさんの友人宅(とある施設)にお邪魔して宴会をした後、五右衛門風呂でくつろいでから眠った。

野尻湖の動画👇

2日目: 犀川(さいかわ)

川下りの技術

昨日の野尻湖から1時間ほど車を走らせて犀川沿いの道の駅で集合したのが午前10時。メンバー4人のうち運転手(ガク)のみが車をゴール地点まで運び、トド師範代と副師範の息子さんに乗せてもらって集合場所まで戻る(今日は親子インストラクター)。出発地点まで戻る道すがら、トドさんと会話していたら衝撃の事実が判明。なんとトドさんは40年以上前に、みやちん、やまとさん、ガクの3人と同じ山岳会に所属していたことがある大先輩だと発覚した。なんという狭い世界だろうか。同じ会にいたというだけで、人間のタイプがよく分かるというものだ。出発地点に戻ってこの話をしたところ、そんなことがあるのかと全員が衝撃を受けていた。

出発地点では、まず川岸までカヌーを下ろす。昨日は気にならなかったが、勾配のある土手道を歩いてみるとカヌーというのは存外重いものだと感じた。川岸で亀仙人師範ならぬトド仙人の話を聞いてからスタンバイする。まだミニチュアの「かめはめ波」がようやく打てる程度の我々に、犀川の流れを楽しむことはできるのだろうか… 流れに翻弄されそうになりながらも、慎重にストリームイン、ストリームアウト、そしてフェリーグライドの練習を行っていく。初めてカナディアンカヌーで体験する川の流れは、はっきり言って怖いの一言で、皆の緊張感が高まっているのが分かる。特に私の目の前のバウマンは、両手で錫杖を握ったお地蔵様のように固まって見えた。

ここでいくつか用語の説明をしておく(下記の用語の具体例については犀川の動画を参照👉こちら

  • エディ – 岸や大岩などの障害物の裏にできる緩い流れや渦。
  • エディライン – エディと流れとの境目にできるライン(流れが当たった岩の両脇の線をイメージすると分かりやすい)
  • ストリームイン – 流れの緩い部分(エディなど)から本流へと入る動き。上流に向かって進み下流側へ回転しながら流れに乗る。
  • ストリームアウト – ストリームインの逆で、主流から離脱して流れの緩いエディなどへ回転しながら入ること。
  • フェリーグライド – 対岸に向かって流れを横切っていく技術。斜め上流に向けて漕ぐことで、流れを利用して横移動する。

沈の恐怖

一通り練習を終えて川下りを開始。穏やかなものを想像していたが、いきなりホワイトウォーター(水の暴れて白波が立っている瀬)を通過して驚いた。まるでディズニーアトラクションである。パドルは水にい入れておく必要があると前日に習っていたので、吹き飛ばされそうになりながらもパドリングを続ける。水からパドルを完全に抜いたままにするとコントロールできなくなるらしい。そのあたりはサーフィン経験(サーフボードのフィンの効果)からなんとなく理屈が分かる。

湖と違って川では水しぶきが飛び込んでくる

  1. ストリームイン・アウトを使い、複雑な流れやカーブの手前で停止しながら、アドバイスを受けて川を下っていく。たまにフェリーグライドの要領で横移動が必要なこともあった。シングルパドルは曲がる方向次第でいちいち頭の中が反対になるので、一度、ストリームアウトの時に反対側(ターンの外側)に荷重をして沈しそうになった。ひっくり変える時はスノーボードでいう逆エッジ(バイクでいうハイサイド)の状態に近い感覚がある。

沈といえば、ストリームインの時に何度か危ういことがあったし、一度は本当に沈した。沈した時は本当にあっというまで、なかなかにびっくりする。冷静にペインターロープというバウとスターンにあるロープをそれぞれつかんでセーフティーポジション(仰向け)を取ったが、幸いすぐ足がついたので無事に復活できた。ちなみにカヌーから水を出すときは完全に持ち上げてからひっくり返さないといけない。そしてそれは足が完全につかないとできないため、深いところでカヌーを自力で起こすのは無理だろう。

ストリームインの時にバランスを崩したことが多かった理由を考えてみたが、たぶん、ストリームインは遅い流れから早い流れに入ることと、ターンの外側からその早い流れが当たることが作用するために倒れやすいのではないかと思った。これは素人考えだが、本来はターンの内側に荷重し続けないといけないところに外側から急に強い流れが当たることで内側荷重が抜けやすくなり、内側への荷重が甘いと、一気に外側にバランスを崩す(またはひっくり返る)のではないかと想像する。体感的にもそんな感じがした。そのため、ストリームインの時はしっかり意識して内側荷重を続けないといけないのだと思った。

反対にストリームアウトでは間違って故意に外側荷重にしていたにも関わらず、沈しそうになっただけで済んでいる。もしかしたらストリームアウト時は、インサイドに流れが当たって外への力を相殺したのかもしれない。ちなみにフェリーグライド時には下流側への荷重が大切だが、これが上流側(ストリームイン時の外側にあたる)に荷重した瞬間にひっくり返るであろうことは、容易に想像がつく。

やまとさん(左)みやちん(中)あっちゃん(右)

その他のリスク

音で判断するのも大切だと教わった。ゆったりした流れの中では水の音は聞こえてこないが、前方で水が暴れているような場所では、ザーッといったノイズが響いてくる。そうした時は一旦止まったり、岸に上がって全体像を見て判断するなどが有効なようだ。あまりくっちゃべったりバカ騒ぎしながら下っていてはいけないということだなと理解した。川の端に寄りすぎてはいけないということも教わった。うっかりしていると川の真ん中よりも左右どちらかに寄りすぎてしまう時がある。特にどんよりと深い流れの時にそうなりそうな気がする。

トドさん曰く、横から枝などが出ているのを体を横に傾けて避けることで、沈してしまうケースが多いらしい。横によけずにカヌーの中に避けるとよいらしいが、全身がスジ肉で、前屈しようものなら弓矢が放てそうなほどに体が硬い私がはたして避けられるのだろうか… やはり中央を通るに限る。停まろうとして草木をつかむのもよくないと聞いた。海外の自然には知らない毒のある植物があったりして、強烈にかぶれることもあるらしい。ユーコンの櫛田さんも「岸に停まろうとして草木を掴んだ場合、カヌーが水流によってバランスを崩し沈する可能性もある」と言われていた。ストリームアウトとフェリーグライドを駆使して正確に着岸するのがベストの選択だろう。

犀川の動画👇

最後に

そんなこんなでカヌーの技術習得に専念した2日だったが、カヌーを漕ぐのはなかなか楽しいものだった。もちろん水が非常に冷たいユーコンではただの一度も沈したくないと思っている。これはユーコンに限った話でもないが、沈して長く流されていると低体温症のリスクが高くなり、最悪死亡することもあり得る。まだ基本的なことしか理解していない我々だが、一応、自分達なりの判断軸を持って、川旅を組み立てていけるのではないかと思えるようにはなったのかな…?

それはそうと、トド師範に稽古をつけていただいた翌週に、Netflixで「水曜どうでしょう」のユーコン編を見直していて思ったことがある。この番組はユーコン計画を立て始めた頃にも見たのだが、当初は全く気にならなかったカヌー操作のことが色々と目につくようになった。危険な動きが随所にあることにも気が付いた。それなりに修行の成果が出ているを実感しつつ、「水曜どうでしょう」の出演者の皆さん(というかすべての芸能人の皆さん)の身を削るような仕事ぶりには頭が下がる思いがした… ということで、やっぱり大泉洋氏はすごかったという話で、この記事を締めたいと思う。

次に動画制作と記事の執筆に手を付けられるのはユーコンから戻ってからになるが、たっぷり素材を持ち帰る予定なので、可能な限りスピーディーに公開していこうと思う。

ユーコンまであと2週間!

★がくんち – Gaku’s Base★

「特集・ユーコン川カヌー」の過去記事はこちら👇
【ユーコン川カヌー】Ep.1 計画編 ~ カナダ・ユーコン川遠征を決定
【ユーコン川カヌー】Ep.2 情報編 ~ 現地ガイドと話して考えたこと
【ユーコン川カヌー】Ep.2.5 補足編 ~ ホワイトホース乗継便のお得な予約方法(2024年4月現在の情報)

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